伝統を支える職人たち
木材の品種に合わせて、
最適な
加工法を考え実行することで、
それぞれの木が持つ個性や特性を最大限引き出します。
加工 梅津広康
木取りによって製材された木材を、厨子の部材に成形加工するのが私の仕事です。特に厨子に使用する木材の種類は、唐木や広葉樹など数多くあります。品種が違えば、硬さも異なるため、加工の仕方も変わります。厨子として製品化した時にそれぞれの木の特徴を個性として引き出したいので、それにはどうしたら良いのかをつねに考えながら、加工する段取りを決めています。その結果、いい木目が出るものもあれば、優しい雰囲気に仕上がるものもあり、個性の違いも厨子の魅力となっています。
前例のないデザインを
実現できるかどうかが
腕の見せどころです。
アルテマイスターの厨子には、デザイナーが手がけるデザイン厨子、漆芸作家による工芸厨子、そして、会津の伝統的な技術を基に作る工房厨子があります。
これらはこれからの時代の厨子を生み出すために始めた新たな試みです。作家やデザイナーから提案される、厨子として前例のないデザインに対して、それをこちらの持つ加工などの技術力でどう実現させるのかが腕の見せどころになります。
例えば、曲木の技術を使わずにやわらかな曲線を出したり、蝶番を見えないように隠したり、脚を木材ではなくスチールで作るなど、これまでの常識では考えられないような提案を苦労しながらクリアするたびに、新しい発見があり、また技術力の向上にも繋がっています。
厨子を置くことで、
そこが
家族の集まる場所になります。
自分が製作に携わった厨子は、そのひとつひとつに重みを感じますし、完成の際にはまるで子どもを世の中に送り出したような気持ちになります。
仏壇と違い、厨子は手に持つことができるものですし、いろいろな角度から見ることもできます。置く場所によって見え方も変わりますし、触れることで心境にも変化が生まれるかもしれません。伝統工芸品でもあり、親から子へ、子から孫へと代々継承する価値のあるものでもあります。
厨子を置くことで、そこが家族の集まる場所になると同時に、みなさんの心の拠り所にもなる。厨子は人と人との絆を深めるものでもあるのです。
梅津広康
1998年入社。NC加工、資材を経て、2012年から現在の加工に従事。