伝統を支える職人たち
厨子の製作は良質な
木材選びから始まります。
個体差のある木目と色味を
合わせることで
美しい厨子が
完成するんです。
買付・木取り 武田裕司
美しい厨子を製作するにあたり、基本となるのが素材に使う天然の木材選びです。それは買付けの段階から始まります。市場に並ぶ数多くの丸太の中から厨子に適したものを選ぶポイントは、真っ直ぐ育っていて直径が50cmから60cmであること。アルテマイスターの厨子は木地が見えるように塗装することが多いため、木目や色味も重要です。選ぶべきは木目となる年輪が均等に育っている樹齢100年前後のもので、芯の部分が両端ともに中心にあること。逆にシミがあるものや年輪に沿って割れているもの、皮の部分に虫が入った穴の多いものは避けています。買付けはおもに11月から3月にかけて行いますが、こうした条件をクリアする木材は希少で、シーズンを通して市場に出回らないこともあるほどです。
木目や色味の近い
木材を見つける作業に
1週間を要することも。
仕入れた木材は、あとからねじれたり反ったりしないよう十分に乾燥させたのち、寸法に合わせて部材ごとに加工していきます。この作業を木取りと言いますが、全体としてバランスのとれた厨子を作るために重要なのは、使用する部材の木目や色味を合わせていくこと。
買付けの際に木材を厳選しているとはいえ、天然の素材なので木目や色味はひとつひとつ異なります。
そのため大量の木材が積み上がった倉庫の中から、部材ごとに木目の模様と色味の双方が近いものを見つけ出さなければならないのです。これがなかなか見つからず、ひとつの厨子に対して木取りにかかる時間は、平均で1日から2日ほど。場合によっては1週間かかることもあります。
木のあたたかみや美しさを
厨子から感じてほしい。
それぞれの厨子に合わせて最適な木材を選び出す木取りの作業は、毎回のように困難を伴いますが、ただ大変なだけではありません。苦しい思いをした分だけ、木目や色味の合ったイメージ通りのものに仕上がった時は、この上ない喜びや達成感を感じます。
昨今の住宅には、木を貼り合わせた合板製の家具が置かれている場合が多いと思いますが、アルテマイスターが作る厨子の部材の9割は、一枚の板をそのまま使っています。だからこそ、部屋に厨子があることで、あたたかみや美しさなど木材本来の素晴らしさを日常的に感じていただけたら嬉しいですね。
武田裕司
2012年入社。木取り、買付を担当。2013年より第3事業部 資材リーダーを務める。